当時死病だった肺結核を患いながら欧米を遍歴していた中村天風は、インドのヨガの哲学者から「たった一つの大事なことをお前は気がついていない。それがわかればお前は助かるんだよ。だから、俺について来い」と言われて感動し、即座に彼の弟子となり、ヒマラヤの麓へと向かう・・・
「天風先生座談」より・・・血を分けた親兄弟でも気味悪がって、めったに近寄らないであろうような、病のためにやつれ果てて、しかもその朝、大きな喀血をしたばかりの午後なんですからね。恐らく顔面蒼白、生きている人間か死んでいる人間かわからないくらいの、やつれ方に違いなかった。そんな病人を連れて行ったら、いつ何時、くたばってしまうかわからない。これはもう素人眼にもはっきりわかることだ。その人間にとにもかくにも俺について来い。お前の助かる道を教えてやる。という言葉を聞いたとき、形容の出来ない感動をうけたということは、嘘、偽りのない告白です。
私はそう感じた。おそらく、そのときまでに、こんな大きな感動でショックを受けたことはない。私の魂が直ちにその私の心を表現して、サーテンリーと言ってしまったに違いないのです。(つづく)

中村天風氏の講話の中から宇野千代氏が構成し著した「天風先生座談」